アルチンボルドが野菜で描いた皇帝
神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展
2017/11/03(金) 〜 2017/12/24(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
大迫章代 2017/11/30 |
現在、福岡市博物館で開催中の「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」。この中で特別展示されているのが、ジュゼッペ・アルチンボルドの代表的絵画「四季」シリーズを立体彫刻として再現したフィリップ・ハース氏の作品だ。
ハース氏はアメリカの現代美術作家。ドキュメンタリーの映像作家としてキャリアをスタートさせ、『エンジェル&インセクト/背徳の館』(1995/劇場未公開)や、サマセット・モームの『Up at the Villa』を映画化した『 真夜中の銃声』(ショーン・ペン、クリスティン・スコット・トーマス主演)などの劇映画も手掛けている。
彼が、2010年頃から始めたのが、アルチンボルドの2Dで描かれた絵画を3Dで再現するという試み、「アルチンボルド・プロジェクト」。展覧会初日に会場を訪れたハース氏に今回の展示作品やアルチンボルドの魅力について聞いた。
「僕は自分の創作活動を、
「最初に作ったのが、この四季シリーズの《冬》。これは、大型の彫刻作品を作るための模型として作ったものだ。これをもとに5メートルほどの彫刻を制作し、ワシントンD.C.のナショナル・アート・ギャラリーほかアメリカ、ヨーロッパ12か所で野外展示した」と、スマホを取り出し展示された各地での画像を見せてくれた。
こちらが模型で、下が野外展示された大型の彫刻。展示場所それぞれの風景にすっかり溶け込んでいるのがおもしろい。
その後、四季シリーズをすべて立体化し、作品は2012年からイギリスを皮切りに、美術館の庭や植物園などで巡回展示された。
その時の風景や制作過程が分かる映像がこちら。
この映像の中でハース氏が語るように、様々な小さなパーツが組み合わされ創り上げられた彫刻は、立つ位置、観る角度、また時間、季節、周囲の風景によってさまざまに表情を変える。それ自体が生きているかのように刻一刻と変化して、二度と同じようには見えないから不思議だ。
隣の作品は《コロッサス:巨像(模型)》という作品。
「こちらはアルチンボルドの版画作品を立体化したもの。これはさらに巨大な25m大のものを作ろうと構想しているのだけど、なかなか資金が集まらなくてね(笑)。完成したらこんな感じになるんだよ。おもしろいだろ?」
すごい、すごいと写真を観て興奮していたら、会場にはない作品まで見せてくれた。
「これは、アルチンボルドの《水》という作品を粘土で立体化したもの。水中に住むいろんな魚介類が組み合わさってできている。《水》という名前にちなんで、噴水にしたいと思っている。そうそう、福岡でこれを作るのにぴったりの場所を見つけたんだよ。ルドルフ展の会場、福岡市博物館。あの池にこの噴水を作りたいね。そういえば福岡に滞在中、長浜鮮魚市場に行ったんだよ。福岡は海が近くて、おいしい魚もいっぱいだろ。海にも豊かな自然にも恵まれている福岡は、この作品を展示するのにぴったりの街。まさに“シティ・オブ・アルチンボルド”だ!」
では、アルチンボルドのような芸術家をこよなく愛した神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世については、どんな印象を持っているのだろう。“政治に関心の薄い変わり者”と言われている面もあるが。
「僕は、彼のことを芸術や文化を通して世界平和を目指した偉大な皇帝だと思っているよ。多様性を認め、いろんな文化や芸術を育てた。今のアメリカ大統領ドナルド・トランプとは大違いだ。世の中には、ルドルフ2世のような指導者がもっと必要。“More ルドルフ、Less トランプだ”。」
最後に、福岡が日本巡回展のスタートとなる「神聖ローマ帝国 皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展」。ハース氏から見たルドルフ展の感想は?
「実に美しくて、ドラマティック。まるで映画のようなストーリーがある展覧会だ。しかも映画より安いうえに、いつまでも見ていられる。見に来て絶対に損はしないよ。」
ハース氏とコラボした特別展示スペースは、撮影もOK。ぜひ、アルチンボルドの名画とともに、じっくり鑑賞いただきたい。
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