アルチンボルドが野菜で描いた皇帝
神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展
2017/11/03(金) 〜 2017/12/24(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
大迫章代 2017/11/23 |
現在、福岡市博物館で開催中の「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」。入口左手には、チラシでおなじみジュゼッペ・アルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》のデザインが施された看板が。果たして、ルドルフ2世と、その“驚異の世界”ってどんな世界なのだろう? 興味津々で会場を訪問してきた。
まずは、プロローグでルドルフ2世のバックボーンとその時代を駆け足で予習。
ルドルフ2世は、ハプスブルク家出自の神聖ローマ帝国皇帝。
1576年マクシミリアン2世の死後、24歳で神聖ローマ帝国皇帝となったルドルフ2世は、1583年に宮廷をウィーンからボヘミアのプラハへ。古い因習と権力争い、さらに宗教対立で息苦しいウィーンから離れ、新しい首都プラハに自分だけの世界、芸術と科学分野の一大コレクションを築きあげた。稀代の収集家として、芸術作品や科学機器などのあらゆる優れた創作物、更には新たに発見された珍奇な(!)自然物などを集めていたのだそう。
ルドルフ2世の時代、16世紀末から17世紀初頭は、航海技術をはじめとする科学の発達で、ハプスブルク家の領土と権益が広がった時代。宮廷にも世界中から未知の芸術・工芸品、動植物が持ち帰られた。同時に、芸術と科学をつなぐ宇宙観や占星術、錬金術、魔術まで、意識世界が拡張された時代でもある。その拡大された世界と知識の領域から、様々な品を採り集め、整理して収蔵したのがルドルフ2世のコレクション。そのため、ルドルフ2世の宮廷には、画家や彫刻家をはじめとする芸術家だけでなく、天文学や科学、数学、錬金術まで当時の最先端の科学者や技術者が集められた。
本展はルドルフ2世が愛好した芸術家たちを中心に絵画や工芸品、貴重な資料等を紹介する展覧会だ。
ルドルフ2世の宮廷に専属の数学者・天文学者として仕えていたティコ・ブラーエの肖像、そして、その後を継いだ天文学者ヨハネス・ケプラーによる天体運行表などが展示されている。天体運行表はブラーエが生涯をかけて集めた膨大な観測データを、ケプラーが引き継ぎまとめたもので、これを使えば、過去や未来のどんな惑星の位置も計算できるのだとか。他にも、ガリレオ・ガリレイの望遠鏡(複製)など、当時の天文学的研究や成果が計り知れる資料も興味深い。
こちらは展示の後半、エピローグ「驚異の世界」の部分で展示されているもの。さまざまな驚くべき万物のコレクションに、その世界観、宇宙観を見ることができる。
本展の大きな見どころのひとつは、何と言っても絵画。
ルーラント・サーフェリーやヨーリス・フーフナーヘルなど、名だたる画家たちの名画がずらりと展示されている。自然画、神話や宗教のモチーフ画、植物や動物の図鑑的な素描まで。その技術と視点の多様さには、ただただ引き込まれ、その美しさ、緻密さに息をのむ。
こちらは、ウィーンにあるパルミジャニーノの有名なキューピッド象に基づくもの。振り向いたキューピッドの表情が印象的で、彼が何を考えているのか、その心の中をのぞいてみたくなる。
こちらは、ターバンを巻いたトルコの擬人像を押しとどめる軍神アルスとして皇帝ルドルフを理想化して描いた寓意画。本展では他にもたくさんの寓意的場面の絵画が展示されているが、そんな象徴的な意味があるなんて、説明を読まなきゃ絶対分からない。
特に、ジュゼッペ・アルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》(1591年)やヤン・ブリューゲル(父)《陶製の花瓶に生けられた小さな花束》(1607年頃)など、その自然物の多様さが特徴の代表的な絵画には、何が描きこまれているのか細かい説明がついているので、じっくり見比べるのも楽しい。
アルチンボルドの有名な「四季」の寓意像から着想を得た追随者による作品もある。「四季」が描かれた16世紀から1世紀以上たっても人気が衰えず、収集家を魅了し続けていた証拠なのだそう。
出口付近には、アルチンボルドの四季シリーズを立体化するプロジェクトを行なっているアメリカの現代美術作家フィリップ・ハース氏とのスペシャル・コラボレーションコーナーが。こちらは、別の記事で、また次回詳しくレポートします。
最後に、こんなコーナーもありました!
そのテーマの広大さ、奥深さに驚く「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」は、福岡市博物館12月24日(日)まで開催中!ぜひお見逃しなく。
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