PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス
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09:30 〜 17:30
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2020/09/24 |
先に売上高が過去最高となった米アップル社だが、24年前は倒産の瀬戸際にあった。創業者のスティーブ・ジョブズ氏が経営者と対立して追放されると、会社は創造性を見失い、業績が低迷したのだ。
しかし1996年、ジョブズ氏が同社に復帰すると、音楽配信サービス「iTunes Music Store」、スマートフォン時代を開いたiPhoneと、世界を一変させる革新的ビジネスに成功、同社を復活させた。
生涯を通じて独創性を重んじたジョブズ氏。アップル社を追放されていた85~96年の11年間は何を創造したのだろう。ITと異なるので見落とされがちだが、私はアニメ制作会社ピクサーを育てたことを重視したい。
ピクサーは「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」製作中のジョージ・ルーカス氏によって設立されたが、不採算性から売却対象だった。ジョブズ氏はこれを買い取り、私財を投じて組織を育成、世界初のCG長編アニメ「トイ・ストーリー」を成功に導いた。
アップル復帰後も彼は、ピクサーの制作体制を堅固にするため新社屋を建設した。創造性持続の要は建物にあるとして、発想を豊かにするため全社員が入り交じる空間づくりを進めた。入り口を一つにし内部には巨大な広場を設けた。出会いの機会を増やすためトイレも1カ所にしようとしたほどだった。(この案は社員の反対で却下されたが)
完成したユニークな社屋を、ピクサー社員は「スティーブの映画」と呼んだ。アニメ制作では蚊帳の外だったジョブズ氏も建物で作品作りに参加できた、というわけだ。
ジョブズ氏はピクサーをさらに盤石にするため、アニメ界の雄ディズニー社に買収を持ち掛けて成立させ、巨大ブランドに仕立て上げた。既にがん宣告を受けていた彼は、生ある間の三つの使命の一つとしてこれに取り組んだ。IT機器はスクラップ化するが、映画は永遠に残ると語っていたという。
死去の翌年「スティーブの映画」には「ザ・スティーブ・ジョブズ・ビルディング」の正式名が贈られ、入り口に掲げられた。ディズニー/ピクサーの快進撃の陰には、天才の深謀遠慮が働いていると、誰もが気付いたのである。 (大串誠寿)
=(9月18日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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