不思議の国のアリス展
2019/12/03(火) 〜 2020/01/19(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
2019/12/25 |
出版から150年以上、世界中で読み継がれている「不思議の国のアリス」。後世の表現者をも魅了してやまない独特の世界観とその魅力を紹介する「不思議の国のアリス展」が福岡市美術館で開催中だ。その見どころを、3回に分けて紹介する。
1862年7月4日の午後。英国オックスフォード大の数学講師、チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソンは、学寮長リデルの娘3人を連れて舟遊びに出掛けた。「何かお話をして」とせがまれた彼は、即興の物語を少女たちに語り聞かせる。帰り際、次女のアリスが言った。「私のために、あのお話を本に書いてください」。児童文学の名作「不思議の国のアリス」はこうして誕生した。
ドッドソンはその夜一睡もせず、昼間の話を文字にした。自作の絵も添え、アリスに手渡した手作りの一冊「地下の国のアリス」は、今も大英図書館に保存されている。
「不思議の国のアリス」と改題しルイス・キャロルのペンネームで出版したのは、それから3年後。キャロル33歳のときだ。挿絵は風刺漫画誌で活躍していたジョン・テニエルが描いた。ドイツやフランス、イタリアでも翻訳、出版された。会場では各国版を見ることができる。
アリス愛好者らでつくる日本ルイス・キャロル協会西日本支部長で山口学芸大教授(英語学)の下笠徳次さん(78)は、「アリス」が広く読まれた理由をこう語る。「楽しいことだらけの内容で、教訓めいた話が一切出てこない」
ビクトリア女王時代の英国では、子ども向けの物語は道徳的な話が主流だったという。教訓主義とは一線を画し、風変わりな登場人物たちが巻き起こす奇想天外な物語は、子どもたちだけでなく大人にも受け入れられていった。 (藤村玲子)=12月24日西日本新聞朝刊に掲載=
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