驚異と怪異――想像界の生きものたち
2023/03/11(土) 〜 2023/05/14(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
2023/04/13 |
世界各地の霊獣や幻獣、怪獣を紹介する展覧会「驚異と怪異--想像界の生きものたち」(西日本新聞社など主催)が、福岡市早良区の市博物館で開かれている。国立民族学博物館(大阪府)や九州各地に所蔵される絵画や書籍、彫刻、祭具など約350点の展示を通して、奇妙で怪しく、不気味だけど愛らしい想像界の生き物に触れることができる。展覧会を監修した同館の山中由里子教授(比較文学・比較文化学)に、企画の意図や見どころなどを聞いた。 (文・鶴智雄、写真・石田禎裕)
―「驚異と怪異」という一風変わったタイトルにした理由は。
「元々は未知の不可思議である『驚異』と、常識ではあり得ない出来事や生物である『怪異』を比較し、歴史的な変遷をたどる共同研究に端を発しています。展覧会では、常識や慣習から逸脱した多種多様な『この世の不思議』や『この世の際にいるかもしれない空想の生物(クリーチャー)』に触れ、人間の好奇心や豊かな想像力を考える機会にしてほしいとの思いを込めました」
―見どころは。
「人魚といったら、ディズニー映画に登場するアリエルやアンデルセン童話の人魚姫をイメージしがちですが、おっさんみたいな顔をした人魚や、両足がナマズの『魚足人』もいます。人魚の話は東アジアや欧州、中東、アフリカなど世界中で伝わっていますが、本当にバラエティーに富んでいて、いろいろと想像しながら『キモかわいさ』などを楽しむのも面白いと思います」
―展覧会はこれまで大阪や兵庫、高知で開かれ、いずれも大盛況だった。人はなぜ想像界の生き物に引かれるのか。
「想像界の生き物は、科学的に証明できないから『存在しないモノ』として排除されてきました。合理主義のおごりですが、自分が見たことがないからといって否定してはいけません。人工授精や人間への豚の臓器移植など、以前はあり得ないと考えられていたことが、科学技術や医療の発展で可能になっています。驚異や怪異は決して過去のものではなく、その世界観を受け入れることで、未来への可能性を感じられるのではないでしょうか」
―会場で注目したい作品は。
「福岡市の龍宮寺に安置されている人魚の骨と生前の姿を描いた掛け軸や、福岡県久留米市の観音寺が所蔵する『牛鬼の手』など、他の会場では写真パネルでの展示だった九州のお宝を見ることができます。また、メキシコ人ならではのユニークさや想像力の豊かさが感じられる『悪魔仮面』なども驚くと思います」
―新型コロナウイルス禍では妖怪アマビエが流行した。
「日本では当初、クルーズ船での集団感染が大きく報道され、コロナは水際の脅威と認識されました。その頃に、波間からのんきな顔をしてぼよっと浮かんでいるアマビエが流行しました。江戸時代には、突然現れて疫病の流行などを予言し消え去ったという奇妙な生き物の図像が、疫病除けのお守りとして庶民の間で人気を博しました。人々は予言獣の御利益にすがり、不安を解消しようとしたのですが、現代のアマビエは、文化の深層に眠っていた『抗体』が作動した現象ではないかと考えています。福岡展では、全国各地で生まれたアマビエグッズの展示もあります」
「人魚やカッパも、もしかしたら、この世のどこかにいるかもしれません。わくわくドキドキしながら、人間の想像力の行方を考えてみてください」
=(4月12日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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驚異と怪異--想像界の生きものたち
5月14日まで、福岡市博物館。観覧料一般1600円、中高生1200円、小学生800円。月曜休館。福岡展事務局=092(711)5491(平日午前9時半~午後5時半)。
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