ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信展
2018/07/07(土) 〜 2018/08/26(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
アルトネ編集部 2018/08/08 |
「現代の浮世絵師」の異名を持ち、身近な出来事をネタに、クスリと笑える江戸風イラストで大人気の山田全自動さん。
7/27(金)、「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信展」展覧会会場をめぐりながら、ご本人にみどころを紹介いただく、ギャラリーツアーの第1回目が開催されました。(第2回は8月17日開催予定)
美人画の名手であり、さりげない日常を愛しみ、描いたという春信は、今もなお、“上品”、“洗練”という言葉で語られ、愛され続けている絵師。
そんな春信の「日常」は、全自動さんの眼にはどう映るのでしょうか――
「浮世絵といっても、葛飾北斎のような派手さがある訳ではないですよね。そして、描かれる顔は、すべて同じ顔に見える能面のような無表情。でもそんな顔をして、炬燵の下からのぞいている足をこちょこちょっとしているという(笑)。
ゲームに夢中の彼がかまってくれなくて、ちょっかいを出している――まさに、リア充なカップルのシチュエーション。」(全自動氏)
「江戸時代といえば、日本では着物を着ていた訳ですから、露出する部位というのは、うなじやくるぶし程度。そんな中、この絵を見てゆくと、膝がにょっきり出ているんですね。これはかなりのサービスショット。春信の絵を観る愉しみの中には、そんなお色気的な要素もあったのかもしれません。 」(佐々木学芸員)
「春信作品には、手に届きそうな美女がよく出てくるんですよね。
東京・谷中にあったというお茶屋の評判娘、お仙さんは、春信作品に登場してさらに人気者になっていったとか。今でいう“スタバのあの娘がかわいい!”っていう感覚(笑)。“会いにゆけるアイドル”はいつの時代も人気です。」(全自動氏)
そして、ゆくゆくは旗本に嫁いでいったという大出世のお仙さんですが、その実在の人物がこちらの絵でも登場しています。
こちらは全24回の春画シリーズの冒頭絵。
「“春信”というと、この文脈で知っている人もいるんではないでしょうか。本展にはこの一枚しか展示されておりませんが ―絵の中に書いてある文字の冒頭を読むと、<むかし へん人浮世之介と云人有 生まれ付好色にめでてある時のことなるに――>(部分抜粋)というやつですね」(佐々木学芸員)
「色事に情熱を燃やす人物・浮世之介の前に、仙女が突如として出てきて、その仙女が差し出す薬を飲んだら、豆粒のように小さな身体になってしまい、“まねへもん”という名前で活躍していくというアレです。
『少年ジャンプ』なんかに出てきそうな展開ですよね(笑)。そして、小さな身体になって出向くところ、見物する事柄というのがすべて色事! こんなめちゃくちゃなシチュエーションの冒頭を飾る1枚ですが、ここで描かれている仙女がお仙さんなんですね(笑)」
「いわゆる春画の一ページ目を飾る作品ですが、仙女が乗っている雲の表現を見てください! 春信の実物作品を見る愉しみのひとつでもありますが、空摺りの凹凸表現がほんとうに美しい。ものすごい技術です。」(佐々木学芸員)
「技術は、印刷物ではわからない作品を目の前にしてわかることがたくさんありますよね。
凹凸のエンボスもそうですし、作品を見る角度を変えることで、浮かび上がる着物の柄なんていうのも、ほんとうに面白い。
今回の展示では春信の追随者の作品も多数ありますね。制作期間をわずか10年として亡くなった春信の人気がいかに物凄かったかということがわかる。喜多川歌麿の作品なんかは、画のテーマだけでなく、着物の柄が浮かびあがるという技法までもがそのまま引き継がれている。まさにトリビュート作品です。」(全自動氏)
春信作品は、もともと作品数が少なく、その8割が海外にあるのだそう。
浮世絵の歴史を変えた革命児――そんな異名を持ちつつ、日本において誰もが知っている存在ではないというのは、春信の作品が、いかに実物を目の当りにしてしかわからない、繊細な魅力を持っているかということと関係がありそうです。
春信の全貌を展望できる150点が揃う会場で、山田全自動さんを導き手に、春信が描く日常の可笑しみ(今も昔も変わらない!?)、そして、絵を自由に愉しむことを教えてもらったように思います。
次回の山田全自動さんのツアーは、8/17(金)18:30~の開催予定。
今回同様、会場の混雑が予想されるので、事前に会場を観ておくとより春信展を満喫できそうです。
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