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信長は「南蛮貿易」で天下を取った!?直木賞作家・安部龍太郎氏講演会【レポート】

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アルトネ編集部
2017/11/06
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10月14日から開催されている九州国立博物館の特別展「新・桃山展-大航海時代の日本美術」。桃山時代を代表する画家・狩野永徳や長谷川等伯らの作品、茶器や刀などの銘品など123点を展示し、和と洋が融合した芸術を堪能できる。開催2日目の10月15日には、『信長燃ゆ』や『等伯』で知られる直木賞作家・安部龍太郎氏が「天下人と大航海時代」と題して講演。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が生きた時代の新しい解釈について話してくれた。

福岡県八女市出身の安部氏は久留米工業高等専門学校に通っていた19歳の頃に小説家を志す。卒業後上京し、30歳でデビュー以降は数々の歴史小説を執筆してきた。歴史を探求し始めたきっかけは、織田信長だったという。

「比叡山を焼き討ちしたり、長島一向一揆に加担した2万数千人もの人々を殺害したり、どうしてそんな行動をとったのか興味がわいて調べていったのです。すると、『織田信長』という人物を語っている歴史観に間違いがあると気づいた。私たちが学校で習った歴史は、江戸時代の史観が大きく関わっていたんです」。

「織田信長が生きた戦国時代は、外国の影響を強く受けていた時代でした。しかし、日本史には『外国から見た日本』『外国と積極的に外交をしていた日本』の視点がありません。鎖国をしていた江戸時代の解釈でそれまでの歴史が語られているんです」

「たとえば1575年に起きた長篠の戦いで、信長は3000丁もの鉄砲を用意し、戦いに勝ちました。これはどういうことでしょうか。鉄砲を使うには硝石(火薬)や鉛が必要で、どちらも日本でとれないため、輸入に頼らざるをえません。つまり、信長は輸入ルートを持っていた、ということなんです」

「鉛や火薬を持たないと戦争に勝てない時代となり、輸入ルートを持っているかどうかが勝負の分かれ目だった。その見方が日本史から抜け落ちていたのです。やはり一度、戦国時代をとらえ直さなくてはいけないと思いました」

信長が持っていた輸入ルート、これがいわゆる南蛮貿易だ。1526年から始まった石見銀山開発を契機に大きく発展していく。精錬技術が発達し、純度99.99%の銀を世界中に輸出することになったのだ。

銀地狛犬。石見銀山奉行を務めていた毛利元就の重臣、平佐就之により寄進された。

「当時、世界中の銀の3分の1を石見銀山で生産し、輸出していました。見返りに海外から陶磁器や漢方薬、生糸などの品々が輸入され、商業が一気に盛んになります。流通の拠点を押さえている信長は、商業で莫大な利益を手にした。そして国内で生産した鉄砲が使えるようになったのです」

「安土桃山時代は商業・流通業が主流だったという事実は戦国史から抜け落ちている」と安部氏は言う。どうにか新しい歴史観を伝えることができないかと考えた安部氏は、安土桃山時代の絵師を題材に小説を書くことにした。

唐船・南蛮船図屏風 狩野孝信筆 九州国立博物館 ※展示期間:11月14日~26日まで


「たとえば狩野永徳の絵の青は、ラピスラズリという石を粉末にして、にかわを混ぜて描いています。ラピスラズリは日本では採取できません。安土桃山の絵自体が海外流通を前提にしないと成り立たないのです。そうやって証拠を示すことで、読者にも納得してもらえました」

 

「小説の中で戦国時代の別の解釈を伝え続けていると、その解釈が一般的になってきました。今回の『新・桃山展』も、安土桃山時代の美術をこれまでにない視点でとらえた特別展です。この場でお話しさせていただくのは、30年分のご褒美だと思っています」

歴史の真実を追究し続けてきた安部氏の言葉から、新しい歴史観を来場者と共有できる喜びが感じられた。安部氏がおっしゃる通り、本展「新・桃山展」ではいかにして桃山時代に海外の文化が流入してきたかが、見て学べるつくりとなっている。行けば、あなたが知っている安土桃山時代が、がらりと変わるかもしれない。

 

奥永 智絵(おくなが・ちえ)
株式会社チカラのライター・エディター。1978年生まれ、福岡市出身。株式会社プランニング秀巧社を経て株式会社西日本リビング新聞社に入社。2011年リビング北九州編集長に就任。2015年から株式会社チカラに所属し、雑誌・広報誌・社内報の制作や経済誌の執筆、文章の学校講師を担当。
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