江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
2024/07/01 |
分類と系統が示す「意外性」
生息環境で外見も類似
哺乳類の進化の不思議に迫る展覧会「大哺乳類展―わけてつなげて大行進」が7月3日~8月25日、福岡市早良区の市博物館で開かれる。3~6月に国立科学博物館(東京)で開かれた東京展の会場を訪れた記者が、「分類」と「系統」のキーワードから浮かび上がる意外な事実や見どころについて、2回に分けて紹介する。
ニホンモモンガという動物をご存じだろうか。皮膜でつながった手足を広げて木から木へと滑空して移動する。東南アジアに生息するヒヨケザルやオーストラリアなどにいるフクロモモンガも外見が似ていて、滑空する点も共通している。
一見すると、この3種は同じグループのように思えるが、ニホンモモンガは齧歯目(げっしもく)でネズミやリスの仲間。ヒヨケザルは皮翼目で、サルの仲間の霊長目に近い。フクロモモンガに至っては、カンガルーやコアラと同じ有袋類の双前歯目で、他の2種とは起源やグループが大きく異なっている。
同様の現象は、体にトゲトゲがある動物にも見られる。ハリモグラは卵を産む原始的な哺乳類の単孔目で、テンレックはアフリカトガリネズミ目、トゲネズミは齧歯目。外見が似ているからといって、必ずしも関係性が近いというわけではない。
このように、異なるグループであっても、生息環境が似ていると、類似した外見や特徴を獲得することを「収斂(しゅうれん)進化」と呼ぶ。体にひれがあるクジラとサメ、前足が翼になったコウモリや鳥類、翼竜など、哺乳類と異なる動物を含めて考えると、理解しやすい。
本展では、約500点の貴重な標本を通じ、進化の過程における多様性や適応の面白さについて、最新の研究成果を交えて分かりやすく解説している。監修者の一人で、モグラを専門とする国立科学博物館の川田伸一郎研究主幹は「生物多様性を維持する上で、分類は欠かせない」と指摘する。モグラは地中に生息するため研究が十分に進んでおらず、現在も新種の発見が続いているという。川田さんは「モグラは農業にとっては害獣。新種が見つかっても、新種と分からなければそのまま駆除され、絶滅してしまう」と訴える。
まさに、生物多様性を考える上で「分類」と「系統」は基本中の基本といえる。進化の不思議を学べば、地球環境の将来に向けた視野も広がる。夏休みに親子で訪れてほしい展覧会だ。 (石田禎裕)
※「わけてつなげて 大哺乳類展」㊦はこちらから
■大哺乳類展-わけてつなげて大行進
7月3日~8月25日、福岡市博物館。西日本新聞社など主催、大和ハウス工業特別協賛。入場料一般2000円、高大生1200円、小中生800円、3歳以上の未就学児300円。月曜休館(7月15日と8月12日は開館、7月16日と8月16日は休館)。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491。
=(7月1日付西日本新聞朝刊に掲載)=
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館
2024/11/23(土) 〜 2024/12/07(土)
福岡市美術館 2階 特別展示室入口付近
2024/12/07(土)
福岡市美術館 1階 ミュージアムホール
2024/10/05(土) 〜 2024/12/08(日)
熊本市現代美術館