日中平和友好条約45周年
世界遺産 大シルクロード展
2024/01/02(火) 〜 2024/03/24(日)
09:30 〜 18:00
福岡アジア美術館
2024/02/06 |
日中平和友好条約の締結45周年を記念し、シルクロードの名品を紹介する「世界遺産 大シルクロード展」(西日本新聞社など主催)が、福岡市博多区の福岡アジア美術館で開かれている。遠くはローマやギリシャからユーラシア大陸を横断して東西文明が交錯した交易路の歴史をたどる。
同展は、東京富士美術館(東京都八王子市)が足かけ約5年をかけて準備を進め、開催が実現した。展示品は、同館学芸部長の平野賢一さんらが中国各地の主要な博物館や研究所に足を運び、選び抜いたものだ。東西文明の融合を示す美術品やインドから伝わった仏像、経典など、シルクロードが黄金期を迎えた唐の時代を中心に、日本の国宝に当たる一級文物45点を含む約200点の貴重な文物が並ぶ。
会場で目を引くのが金銀の宝飾品の数々だ。「お客さんに喜んでもらおうと、鮮やかで華やかなものを持ってきたいという思いが一貫してあった」と平野さん。その一つが金製の「瑪瑙象嵌杯」。多数の赤い瑪瑙がはめ込まれた豪華さに加えて、虎をかたどった取っ手には、毛並みやしま模様が細かく彫り込まれ、技術の高さも感じさせる。草原地帯で暮らした遊牧民の文化との関連が指摘されている。
唐の2代皇帝、太宗のきさきの墓に描かれた「献馬図」は、彫りの深い顔立ちをした西方出身の異国人とみられる男性が馬を献上する様子を表現。国際色豊かな当時の社会情勢がうかがえる。「車馬儀仗隊」は漢の時代の墓から出土した青銅製の車馬隊で、馬が口を開けた表情や首を傾けた姿勢がリアルに造形されている。今にも馬のいななきが聞こえてきそうだ。
シルクロードの影響が日本に及んでいたことが分かる逸品もある。華やかな女性用の「唐花文錦鞋」は奈良の正倉院にそっくりのデザインの鞋が伝わる。反り返った爪先に長いスカートの裾を引っかけていたという。樹下にふくよかな女性がたたずむ「樹下美人図」は唐代に流行した画題で、こちらも正倉院宝物の「鳥毛立女屏風」にその影響が見て取れる。
同展は、シルクロードが2014年に世界文化遺産に登録されて以降、中国国外で開かれる初の大規模展覧会となる。平野さんは「デザイン的にも、今の私たちが使えそうなものがたくさんある。古いものだけど、新しさを発見できる展覧会だと思う」と見どころを語る。ラクダの隊商が砂漠や草原を行き交った悠久の歴史ロマンに思いをはせながら、東洋と西洋、過去と現在をつなぐシルクロードの奥深さに触れてみてはいかが。(文・片岡寛、写真・石田禎裕)
=(2月3日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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