バンクシーって誰?展
2022/12/17(土) 〜 2023/03/26(日)
10:00 〜 18:00
福岡アジア美術館
2023/02/17 |
世界のストリートで独自の表現活動を続ける覆面アーティスト、バンクシー。作品の魅力とメッセージを伝える「バンクシーって誰?展」(西日本新聞社など主催)が福岡市博多区の福岡アジア美術館で開かれている。バンクシーの絵を街並みごと再現した会場の模様を写真で紹介するとともに、その都市で描いた意味や意義について、活動の初期から注目し続ける東京芸術大教授の毛利嘉孝さんに語ってもらった。 (聞き手・塩田芳久、写真・古賀亜矢子)
―バンクシーは英国・ブリストルで生まれ育った。どんな街か?
「英国西部の港湾都市で、三角貿易の拠点として米国やアフリカとの通交がありました。移民も多く多文化的な街です。いち早く米国からヒップホップが入ってきて、音楽シーンに影響を与えました。ブレイクダンスやグラフィティ(スプレーなどで公共の場所に描く絵や文字)も流入し、米国文化を取り込んだ独自の文化が発展しました。また多文化的な地方都市らしく、反中央集権、反骨精神が根付いていて、そんな土地柄を背景に、バンクシーはブリストルで活動を始めました」
―毛利教授はロンドン留学中に最初にバンクシーの作品に出合った。
「2003年ごろです。バンクシーは拠点をロンドンに移し、街の壁などに(型紙にスプレーを吹き付ける)ステンシルの手法で描いた絵画が話題になり始めていました。03年のイラク戦争の反対運動では『爆弾を抱きしめる少女』などを描いた段ボールのプラカードを配り、注目されました。反戦、パレスチナや移民・難民の問題、反資本主義といったテーマに積極的に取り組むようになったのはロンドン時代です」
―パレスチナで抗議する男性を描いた「ラヴ・イズ・イン・ジ・エア」は象徴的な作品だ。
「イスラエルからの脅威にさらされたパレスチナで描いたことに大きな意味があります。石を花束に代えた表現がウイットに富んでいて、バンクシーのイメージを決定づけました。会場に再現された『ザ・ウォールド・オフ・ホテル(壁で分断されたホテル)』はバンクシーがベツレヘムにオープンしたホテルで、館内に作品を飾り、窓の外にはイスラエルが建設した分離壁(パレスチナ人の往来を制限する壁)が見えます。バンクシーらしいアイロニーに満ちた、誰もまねできない『作品』です」
―遠く離れた日本で、バンクシーのメッセージはどれだけ響くのか?
「『バンクシーが問題を抱えた地域に行っても何も変わらない』と言われますが、行ったことによっていろいろな課題が見えてくるのも確かです。バンクシーがパレスチナで描いた時、イスラエル兵から銃口を向けられたといいます。会場に行ってバンクシーの緊張感を想像することは、この問題が身近でない日本人にとって、考える入り口になるのではないでしょうか」
―会場のあちこちにネズミが登場する。バンクシーとネズミの関係は?
「初期から一貫して描くテーマです。ネズミは都市の嫌われ者。汚物にまみれて地下を走り回り、移民や難民、ホームレスなど社会から排斥される人々を象徴しています。夜しか活動せず、見つかると捕まるグラフィティライターとも重なります。しかし、ペストのように都市や社会を破壊する力もあります。ネズミはバンクシー自身、と考えて会場中で追いかけることもできるでしょう」
もうり・よしたか
1963年生まれ、長崎県大村市出身。京都大卒。ロンドン大社会学部博士課程、九州大助教授などを経て現職。専門は社会学、文化研究。著書に「バンクシー アート・テロリスト」(光文社新書)があり、バンクシー関連書籍の翻訳も手がける。
=(2月16日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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