生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎
2022/10/29(土) 〜 2023/01/22(日)
10:00 〜 17:00
久留米市美術館
2022/12/16 |
坂本繁二郎は東京で活動していた大正時代、牛をよく描いた。絵を見た友人らは、牛を坂本の“自画像”だと捉えていたという。
32歳で第1回二科展に出した「海岸の牛」は房総半島とみられる海岸を背に、くいにつながれた牛を描く。同じ房総で「海の幸」を描いた青木繁の死から3年後のこと。晩年、「まるで牛のように、牛を描き続けた」と言葉を残した坂本は、静かな海岸にどこか窮屈そうにたたずむ牛に、どんな思いを込めたのだろう。
1907年の東京勧業博覧会で青木の「わだつみのいろこの宮」より高評価を得た「大島の一部」にも、情景として牛を描いた。12年発表作品からは牛そのものを大きく描き、新聞に芸術記事を連載していた夏目漱石の目にもとまった。渡仏前年の20年に発表したモノクロ調の「牛」は視線の先に柵があり、外の世界へと挑む自らの決意を重ねたようにも受け取れる。
「海岸の牛」はどうか。久留米市美術館の森山秀子副館長は「実は、牛の右側にくいを描こうとした跡がある」という。結果的にくいは牛の視線の先に斜めに立ち、より強調された感がある。自信を付けてきた坂本がくいから解き放たれ、青木を超えんとする気概を重ねたのでは…と解釈するのは、飛躍だろうか。
帰国の翌年、二科展に「馬」を出品。留学中に得た淡く柔らかい色彩表現で、その後の作品はさらに華やぎを増す。ただ、坂本は決して西洋の作風のみに傾倒しない。経験を昇華させ、人生の深まりに呼応するように、画業を成熟させる。
=(12月16日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 来年1月22日まで、久留米市野中町の市美術館=0942(39)1131。西日本新聞社など主催。一般1000円、65歳以上700円、大学生500円。高校生以下無料。
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