国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術
2022/09/03(土) 〜 2022/10/16(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
2022/10/06 |
恐ろしげな表情の獅子が見る者をにらみつける。江戸時代に活躍した長沢盧雪(ろせつ)の「唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)」は、激しいタッチでたてがみや尻尾を描いた躍動感あふれる作品だ。横幅約3・5メートル。迫力満点である。
福岡市美術館で開催中の「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」では、さまざまな姿形で表現された動物に出合うことができる。
目玉の一つは国宝「鳥獣人物戯画(鳥獣戯画)」(平安―鎌倉時代)。全4巻のうち現在展示している乙巻には、鶏や犬、馬、牛といった身近な動物に加え麒麟(きりん)や龍が登場する。有名な甲巻と違って擬人化された兎(うさぎ)や蛙(かえる)は出てこないが、草を食べたり駆け回ったりする生き生きとした姿が観覧者を引きつけている。
江戸時代には絵師たちが盛んに動物を描き、人気を博した。怖い獅子を描いた盧雪はかわいらしい子犬の絵も残している。師匠である円山応挙の子犬と、目や毛並みの違いを見比べるのも面白い。鍬形蕙斎(くわがたけいさい)の「鳥獣略画式」には、簡略化されて何ともゆるい雰囲気をまとったフクロウや兎の図がちりばめられている。
展示からは、動物が祈りや信仰と結びついてきた歴史も分かる。「文殊菩薩(ぼさつ)像」(14世紀)に描かれる獅子は、仏教美術によく登場する動物。「弥兵衛鼠(ねずみ)絵巻」(17世紀)は、白鼠の弥兵衛が、自分を福の神として大切にしてくれた人間に恩返しをする物語だ。
奥深い歴史を持ちながら、年齢を問わず誰もが楽しむことができる動物絵画の数々。会場にはじっくりと展示を眺める子ども連れの姿もあった。 (文・諏訪部真、写真・古賀亜矢子)
=(10月6日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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