江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
木下貴子 2022/09/03 |
あるときは街中で、あるときは紙面で、またあるときはテレビ画面を通して、その作品を目にしたことがある人も多いはず。福岡を拠点とし、全国的に活躍するイラストレーター、ABEchan。若者から高い支持を得ているが、ポップな中にもノスタルジックさを感じさせる作風で、世代を超えて広い層から人気を集め、とくにここ1〜2年における活躍は目覚ましい。「懐かしい作品だけど新しい。模索中ではありますが、その僕の世界観をうまく表現できたらいいなと思いながら描き続けています」と、ABEchanは話す。
イラストレーターとして活動を始めたのは2016年。もともとは、グラフィックデザイナーとして働いていた。「ものづくりをしたい」という気持ちが大きく、デザイン系の専門学校に進学し、卒業後はデザイン会社に就職。いくつかの会社を転々とし経験を重ねる中、きっかけが訪れた。「ある代理店では手描きラフを出すことが多かったんですが、僕の手描きラフを見て同僚が『あべくんの絵って、なんかおもしろいね』って言ってくれて。その一言が頭に残って、うっすらですがイラストレーターっていいなって憧れるようになりました」。
気持ちが芽吹いたのは、グッズ展開などもする会社「ハーバーハウス」に勤めていたときのことだ。「グラフィックデザイナーでの採用でしたが、職場ではけっこう自由に仕事がさせてもらえたので、イラストにチャレンジしてみました」。これを機に働きながらイラストを描き、Instagramへの投稿も始めていった。
自分の場合、よりオリジナリティを出せるのは、グラフィックデザインよりもイラストだと感じたABEchanは、ほどなくイラストレーターとして本格的に活動を開始した。SNSや雑誌、壁画など、作品発表を続けるうちに、福岡を中心に飲食業を展開する会社「コマツ」の目に留まり、スカウトされ、そこの制作部に2年ほど所属。店舗内を彩る壁画や看板、メニュー、グラスなどのイラストを手掛けた。「社長や上司が『好きにしていいよ』と言ってくれたおかげで、自由に伸び伸びと描くことができました。これはちょっとどうかな?っていう表現も寛大に受け入れてくれたり……そういった環境の中でも、商品と僕のイラストを組み合わせることで、どれだけ若い人に響かせられるかを考えながら制作していた時期でもありました。この経験で力がつけられたなと、とても感謝しています」。
2020年4月に独立し、フリーランスに。SNSでの作品発表と並行し、たとえば福岡県の感染防止認証制度のポスターやCM、キャナルシティ博多OPAの25周年イベントにイラストを提供したり、また、全国区においてもセレクトショップ「Right-on」のプリントTシャツを手掛けたり、ダンス&ボーカルグループ「Da-iCE」のPVのイラストで参加したりと、活動の幅も、活躍の場所も広げている。
(後編へ続く)
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