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絵に宿る風土 大地の力展② 追憶のヤマ追い求め

2021/11/19 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 意味や形式を軽々とすり抜け、どこまでも自由な野見山暁治の作品では珍しく、故郷を描いている。穂波村(現飯塚市)出身の野見山は、父が炭鉱を営んでいた。

野見山暁治「ぼくの生まれた川オンガ」(1992年、田川市美術館蔵)
©︎Gyoji Nomiyama 2021/JAA2100201

 「石炭が混じって黒々としてね、あんまりきれいじゃなかったですよ」。9月にあった内覧会を訪れ、遠賀川の光景をひょうひょうと振り返った100歳の野見山。それでも、絵の中の川面は白く光り、深々とした緑は青く美しい。野見山は、抽象画ではなく「見たままを描いている」とも語る。この美しさは、彼の脳裏に焼き付いた像だろう。

 中学校の国語教師で、学校演劇にも長く携わった平岡春治は40代で絵を描き始めた。田川市に生まれ育ち、少年期に目にした選炭労働の女性像を描いている。

平岡春治「筑豊曼荼羅’16」(2016年、個人蔵)

 ヤマに刻み込まれたような地霊を背負いながらも、紅をさした女性は凜として立つ。「2016年の発表後も、画家は手を入れ続けている」と担当の佐々木奈美子学芸員。発表当初よりも肌はつやを帯び、なまめかしさを増している。手を伸ばしても永遠に手の届くことはない、追憶に残る女神を追い求めるようだ。

(担当:大矢和世)

****

 久留米市美術館で、開館5周年記念展「九州洋画Ⅱ 大地の力 Black Spirytus」(西日本新聞社など主催)が開かれている。12月12日まで。「九州ゆかりの近代洋画」を軸にコレクションを構築する同館。特に風土を反映した力強い表現に光を当てる企画展だ。黒田清輝、坂本繁二郎といった巨匠から気鋭の若手まで幅広い作品78点が並ぶ。筆跡に宿った迫力の一端を届けたい。

=(11月17日付西日本新聞朝刊筑後版に掲載)=

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