日伊国交樹立150周年記念
世界遺産 ポンペイの壁画展
2017/04/15(土) 〜 2017/06/18(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
林 綾野 2017/04/17 |
展覧会企画や美術書の企画・執筆を手がける林綾野氏をゲストに迎え、九州・山口で鑑賞できる展覧会やコレクションを取り上げる連載コラム。画家の思いやその人柄、食の趣向などを探求、紹介し、芸術作品との新たな出会いを提案する林氏と一緒に、作品を読み解く旅に出てみては。(編集部)
福岡市博物館では「世界遺産 ポンペイの壁画展」が開催中です。古代ローマ帝国の都市のひとつだった「ポンペイ」を壁画を通じて体感できる貴重な展覧会です。
地中海に面する南イタリア、ナポリ近郊に位置するポンペイ。世界遺産にも指定されるこの町は、ローマ帝国が栄える西暦79 年、町の北側にあるヴェスヴィオ火山の噴火により火砕流にのみこまれ、二千人以上の人が亡くなるという悲劇的な終焉を迎えました。
噴火後、火砕流にすっぽりと覆われた町は復興は不可能とされ、次第に歴史の中で忘れ去られていきます。乾き固まった火砕流の下で、町はその姿をひっそりと留めながら月日は流れて行きました。16世紀になると、ポンペイのあたりに何か遺跡があると噂されるようになり、1748 年から本格的な発掘調査が始まります。そして、それまでけして知ることの出来なかったローマ時代の町が、実際にどのような姿をしていたかが明らかになっていったのです。
この展覧会では、そうしたポンペイの遺産の中から「壁画」に焦点を絞り、〈1章 建築と風景〉〈2章 日常の生活〉〈3章 神話〉〈4章 神々と信仰〉という4章仕立てで約80点の壁画作品が並びます。とりわけ興味深いのは、建物の1室がまるごと再現されるように壁画が展示されているところではないでしょうか。
例えば、カルミアーノの農園別荘のトリクリニウム(食堂)。葡萄酒(ワイン)やオリーブオイルを作っていた農園の持ち主は、普段は町に暮し、農園を見に来た際に「農園別荘」に滞在しました。展示室では別荘の食堂部分の壁画が、三方を囲むように空間として再現されています。さらに目を引くのは、他の壁画にもいえますが、「赤」や「黄」といった色彩の鮮やかさ。ところどころ朽ちているところはあるものの、ポンペイの人たちが、こうした原色の世界観の中で過ごしていたということを体感することができます。壁画には葡萄酒を作る家らしく、お酒の神様「ディオニュソス」の姿がいくつも描かれ、その他にも豊穣の女神「アミュモネ」や「ケレス」の姿も見えます。どれも農園別荘ならではの装飾で、ポンペイ人たちが、建物や部屋、そのひとつひとつに深いテーマを持っていたことがうかがわれます。
この展覧会を楽しむのに欠かせないのは何よりも「想像力」かもしれません。当時の人々の気持ちになって、その空間に立ってみる――。窓から眩しい太陽の光がさし、オリーブの葉をゆらす風の音が聞こえる。どこからか運ばれてくる葡萄酒の香り、トゥ二カ(ローマ時代の服)をまとった人が行き来する道。豊かな都市生活の中で、大噴火前の地震に人々は不安な気持ちを抱いたかもしれない…。そんな風にポンペイの人たちに思いを馳せながら展示室を歩けば、タイムトラベルしたような気持ちにもなれます。
最後にやはり気になるのは「ポンペイの人たちは何を食べていたのか?」。いくつかの壁画には「食材」も登場します。「ディオメデスの別荘」の壁画《静物》には、ナツメヤシやニンニク、タマネギ、乾燥イチジクなどが描かれています。食糧棚をモチーフにしたこの壁画は、ころんと置かれたタマゴの姿などもあってどこかユーモラスです。ポンペイは地中海に面し、海の幸にも恵まれていました。パン屋や居酒屋、大きなキッチンなどの遺跡も残っており、食文化の華やぎもあったに違いありません。
寝転びながら食事をすることもあったというローマ時代の人々。フォークを使わず手づかみで食べていたともいいます。ポンペイ人はどんなものを食べたのか――、そんなことを考えながら展示を見るのも楽しいです。
二千年以上前に高度な技術と深い思想のもとに制作されたポンペイの壁画。歴史や技術、町や人、神話や食文化など注目すべき多くのポイントの中で、心に響くものは何か?ちょっと自分に引き寄せ、想像をめぐらしながら展示室に身を置けば、ぐっと展覧会が楽しくなると思います。
ポンペイの風景パネルの前で撮影できるフォトコーナーや、ポンペイマップ柄のマグカップなどのグッズ、壁画に描かれた食材を使ったコラボメニューなど関連企画もたくさんあるのであわせてポンペイの世界を体感してみてください。
〈美味しいポンペイ情報〉
西鉄グランドホテル・ソラリア西鉄ホテル・マリエラでは、ポンペイの食を楽しむ展覧会コラボメニューが展開予定。写真左は、壁画に描かれた乾燥イチジクをモチーフにポンペイ風に焼き上げたパン (西鉄グランドホテル・ル プティパレ)。右は、「タコのルチア風」、トマトソースにおぼれたタコ、 という名のこのお料理はポンペイの近郊、ナポリの定番料理。地中海らしさあふれる味わい(ソラリア西鉄ホテル・トランスブルー)。
メニューの展開時期など詳しくはこちらへ。
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