九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  絵で表すしかないもの オチ・オサム展 言葉の前に

絵で表すしかないもの オチ・オサム展 言葉の前に

2020/10/29 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 画家のオチオサム(1936~2015)は、浮遊する感覚に彩られた球体の絵画で知られる。丁寧に塗った球面と、それらを結ぶように引いた精密な線は美しい。宇宙や未来を想像させ、見る者を楽しませるが、謎めいた雰囲気も漂う。

 福岡県小郡市の自宅に大量に残っていたスケッチやデッサンの一部を集めた展覧会「言葉の前に」は、言葉巧みに自らの思想を語ることはなかったというオチの表現の背景を探る。

「オチ・オサム展 言葉の前に」の会場。
1978年に描いた球体の絵画(左の2点)と、亡くなる1週間ほど前に残していたスケッチ(右端)

 オチは佐賀市出身。1955年の二科展で2点が入選し、華々しくデビューすると、50年代後半に前衛美術グループ「九州派」に加わった。作品にアスファルトを使用するというオチが発案した手法は、「反芸術」を掲げたグループの代名詞となる。

 本展で紹介するほとんどは九州派解散後の作品。浮かび上がるのは、熱狂の後で独自の思索を深めていった姿だ。展示する球体の油彩画は78年の3点だが、2000年代のスケッチ類にも、円や球を線でつなぐ図が複数ある。丸い形の連環に関心を持ち続けたようだ。羽や山など自然物のモチーフも繰り返し登場する。

 妻の越智順子が「手を動かしていないと落ち着かない人だった」と振り返る通り、家族で出掛ける際にも紙と絵の具を持参したオチが、亡くなる1週間前に残したスケッチがある。立方体の上面から細い管が伸び、その先に赤い球。側面からは、膨らんだ餅のような形が噴き出す。

 これを、無機質な人工物から有機的なエネルギーがもえでてくる図と読むなら、球体の絵にオチが求めたものも、無から生まれた生命の原初と輝き、連続だと解釈できる。だが、そう言葉にすると平板だ。だからオチオサムは、絵として表現するより他にどうしようもないものを探し続けたのだろう。(諏訪部真)

=(10月26日付西日本新聞朝刊に掲載)=
 


オチ・オサム展 言葉の前に
会期:2020年10月13日(火)~10月31日(土) 13:00~19:00
   月・火曜休廊
会場:EUREKAエウレカ
   (福岡市中央区大手門2-9-30 Pond Mum KⅣ 201)

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 070f2343ce

江口寿史展
EGUCHI in ASIA

2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館

Thumb mini 199fb1a74c

挂甲の武人 国宝指定50周年記念/九州国立博物館開館20周年記念/NHK放送100年/朝日新聞西部本社発刊90周年記念
特別展「はにわ」

2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館

Thumb mini cc532e7188
終了間近

博多のみほとけ スペシャルギャラリートーク

2024/11/23(土) 〜 2024/12/07(土)
福岡市美術館 2階 特別展示室入口付近

Thumb mini ad2c48cda0

福岡市美術館が贈る 絵本とピアノのウィンター・ワンダーランド Happy Christmas Time!

2024/12/07(土)
福岡市美術館 1階 ミュージアムホール

Thumb mini 63695bf1c7
終了間近

ライフ2 すべては君の未来

2024/10/05(土) 〜 2024/12/08(日)
熊本市現代美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 69f39eb687
コラム

【コラム】海に捧げた祈り 特別展「博多のみほとけ」㊦ 受け継がれてきた記憶

Thumb mini de42a44aa5
コラム

【コラム】海に捧げた祈り 特別展「博多のみほとけ」㊥ 国際交流が生んだ名品

Thumb mini 09b94817ac
コラム

【コラム】海に捧げた祈り 特別展「博多のみほとけ」㊤ 独自の表現に込めた思い

Thumb mini 84bd4abc0f
コラム

【コラム】対外交流と祈りの歴史 特別展「博多のみほとけ」 福岡市美術館 12月8日まで 博多湾沿岸の仏像を一堂に

Thumb mini bd0ad2c473
コラム

【コラム】夏の夜にともる物語 特別展「大灯籠絵」㊦  正月行事で奉納の大絵馬

特集記事をもっと見る