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福岡アジア美術館
山出淳也 2021/05/13 |
自分なりのルーティーン
最近出会った人からは、「山出さんは凝り性だねぇ」と言われることがある。
確かに、どんなことでも気になったら、とりあえず自分の言葉で語れる程度にのめり込む。でもそれは、調べたり考えることが習慣化しているだけ。発端は、独学でアートを学ぼうと決めたこと。そう決めたので、必要となる知識も技術も、自分自身で獲得しなければならなくなった。10年分くらいの美術雑誌をほとんど暗記するまで繰り返し読んだ。気になっていること、実現したい何かに必要であれば、どんな知識や技術でも身につけようとした。アートを仕事に変えるために、僕にはそれを習慣化するしかなかった。今でもそれが続いている。自分なりのルーティーンみたいなものだ。
ルーティーンといえば、中学生の頃、机の片付けから始めないと勉強に身が入らなかった。今でも何か始めるときは、整理をしてからじゃないとうまくいかない。散らかったまま手を動かしたところで、大切な何かは隠れたまま、顔を見せてはくれない。
アーティストとして活動を始めた20代の頃、気になったことを忘れるのが怖くて、いつもそばに紙とペンを置いた。今では、アプリに代わり、保存場所がクラウドになった。2万件を超える記事。記録した内容を今語れと言われてもほとんど思い出せない。
でも、誰かと話し始めると、スクラップした記事が記憶の片隅からするするとあふれ出すことがある。記事やメモを記録するボタンを押す瞬間、多分僕の集中力が高まって記憶のどこかにかろうじて残っているのだろう。
「かつて、ほとんど毎朝カレーを食べていた」とイチロー選手が語っていた。歴史に残る名選手でもルーティーンを大切にするんだなって知った。
僕にはそんな才能はないけれど、自分なりのルーティーンを何年も続けることで自然と体に身についた、引き出しの数々。それが今の僕を作っている。決めたことを守り続けることだけがその近道だ。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)
=(1月15日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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