江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
アルトネ編集部 2019/12/27 |
九州・山口の展覧会情報やアートに関連情報を発信する WEB マガジン ARTNE(アルトネ)は 元号が改まった2019 年も各施設に協力いただき、たくさんの展覧会をご紹介してきました。その情報発信で培ったネットワークを駆使し、恒例となった展覧会入場者数のアンケートを今年も実施。美術館・博物館からの回答を元に作成した独自の<入場者数ランキング>をもとに 2019 年の九州・山口展覧会シーンを振り返ります。
まずはなんと言っても福岡市博物館の「ジブリの大博覧会〜ナウシカからマーニーまで〜」。福岡市博物館としては「人体の不思議」展(1998年7/12-8/30)の動員を上回り歴代最高を記録しました。実は「ジブリの大博覧会」は、3/15-6/16までの88日間というかなりのロングラン。第2位のハウステンボス美術館(ハウステンボス内 )「鈴木敏夫とジブリ展」、第3位のいのちのたび博物館夏の特別展「探検!両生類・は虫類の世界」、第4位の熊本市現代美術館「デザインあ展 in KUMAMOTO」も比較的長い会期設定です。今後はファミリーでお出掛けできそうな多くの動員が見込める展覧会を長期にわたり開催することが主流になってきそうです。混雑しがちな大型展の1日あたり入場者数が抑えられることは、鑑賞環境としては歓迎すべきことでしょう。ただ、絵画や書跡など展示日数が限定される繊細な作品ではそもそも長期に展示することは困難。さらに、会期が長いと”中だるみ”も付き物ですので、話題作りの工夫も必要です。
いわゆるアニメや体験型ではない、"普通の展覧会"はランキングの半分ほどを占めています。その中で九州国立博物館特別展「室町将軍展」と福岡市博物館「侍~もののふの美の系譜~The Exhibition of SAMURAI」は、従来の美術愛好者たちだけでなく、刀剣乱舞ファンを狙いうちした、近いタイプの展覧会だったと言えます。もはや説明不要かもしれませんが、「刀剣乱舞-ONLINE-」は、DMM GAMESとニトロプラスが手がけるPCブラウザ&スマートフォン向け刀剣育成シミュレーションゲーム。ゲームに登場する刀剣を見に全国からファンが殺到する現象が2015年ごろから継続しています。両展覧会ともに、グッズやパネル展示など数々のコラボ企画で盛り上げ、特に初日には多くのファンが殺到したようです。
開催途中のためランク対象外となっていますが、すでに10万人を突破している九州国立博物館特別展「三国志」では声優コラボ版の音声ガイドやゲームとコラボレーションした関連イベントが展開されていたり、福岡市美術館で開催中の「不思議の国のアリス展」では展覧会内でリアル脱出ゲームがおこなわれていたり…。コラボ企画と特別展をセットで楽しむという文化も珍しくなくなってきました。コラボ企画目当てで来場した新たな観客をいかに再訪させられるか?が真の勝負かもしれません。
さて、残念ながら、昨年コラムの宿題となっていたコレクション展ランキングは、期間設定や特集企画に入場したかどうかが判別できないなどカウントが難しく今年は実現していません。ですが、2019年はコレクション展示という視点で切り取ると、特徴ある年でした。
第8位となった福岡市美術館リニューアルオープン記念展は同館コレクションを中心に据え、福岡アジア美術館開館20周年記念展「アジア美術、100年の旅」もコレクションが展覧会の中核を担いました。久留米市美で「久留米市美術館のコレクションing きょうも活動中」が開催されたり、山口県立美術館開館40周年記念でコレクションの「香月泰男のシベリア・シリーズ」が特別展示されたり、例年に比べて各館コレクションのベストメンバーを見られる機会が多かったと言えるでしょう。
また、熊本市現代美術館の『きっかけは「彫刻」。』展では、特別展示室にあたるギャラリーの前半が国立美術館巡回展で、後半は同じテーマのCAMKコレクション展という大胆な構成で同館のコレクションを紹介。反対に、九州国立博物館では、いわゆる常設展示室にあたる文化交流展示室で借用品を含んだ意欲的な特集展示が行われています。こういった取り組みは他館でも見られ、特別展示室は借り物だけ、コレクション展示室は館の所蔵品だけという固定観念を取っ払った展示は続いていくでしょう。借用品、所蔵品それぞれの良い点を引き出す柔軟なキュレーションが広がり、鑑賞者を楽しませてくれることを期待します。
と、最後はランキングとは全く異なる話になってしまいましたが、ARTNEでは、2020年も様々な展覧会情報を発信してまいります。みなさまの展覧会鑑賞のお役に立てれば幸いです。
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